旧和賀川水力発電所 探訪記録 後編
11:00₋
サージタンクを一通り見て、携帯食料をモソモソと食べて先へ進む。
サージタンクから発電所方面へ歩くと、このように石垣で出来たスロープのような道が出てきた。割と踏み跡が出来ていて現役感が出ているのはやはりそれだけ探訪者が多いという事なのだろう。
下の平場には一面に秋が広がっている。
少しづつ、見えてきました。インターネット上でしか見れなかった夢がもうすぐそこに…今自分が歩いている道、そう、道と言える程、筋がはっきりしてます。探訪者の多さ故なのか元々あった道の成れの果てなのか…
…そして…
…
…見つけました。ずっと見てみたかった。ある意味人生の目標の一つであった。
旧和賀川水力発電所
すごい…もうそれしか口から出てこない。己の語彙力無さに歯がゆさを感じる。
右側から、地下と上階に行けそうです。1階から探索する。
玄関横の部屋。左右に大きい何かを置いていたと思われる土台。一瞬、仮眠室かと思ってしまいました。
私、電力関係の事は一切分かりませんからこの構造物が何なのかすら分かりませんが、周辺には何かを固定していたボルトや基礎がたくさん。残されたものから、操業当時の風景を想像することしかできません。しかもそれは推測に過ぎない。全て、後付けの、何か。
そんな思考をしているのもここでは私一人。時間を経過させているのは私だけ。変わらないものの過去を想って、その空間の針を進めたって、そこに意義など存在しない。
次の部屋に向かう -
……言葉が出てこない。カメラを持つ手も動かない。取り敢えず全体を収めようと思いファインダーを覗くが、構図が決まらないのではなく分からない。でも、その中でも良いと思える構図でシャッターを切る。
この空間にたどり着くまでに命の危険を感じる箇所や、「無理なんじゃないか」と思った場面もあった。
でも今私はその一切を忘れている。「命の危険を冒して良かった」「諦めなくて良かった」。それほどまでに心打ちひしがれている。大袈裟だけど本当にそう思った。次回は多分思わないだろう。
「美しい」とか 「綺麗」とか 少なくとも私はこの情景を言葉では表すことが出来ない。
階段を登り2階。何が設置されていたのだろうか。せめて機材の一つ残っていればと思うが一般的に考えてそれはあり得ない…「縦に長く大きい何か」が置かれていたとしか…なんとなくサーバールームを連想させる。
反対側。
ちょっと進んで振り返る。
さらに進むと部屋があった。事務室...?床が柔らかく今にも抜けてしまいそうなので慎重に....
地上の最後の部屋。
地下へ ー
今日はこれ以上下へは行かない。
帰りは行きと同じルートではなく、渡河で帰りたいと思う。このルートなら山ルート?の数倍早くアクセスできる?と川を目の前にしてふと思いました。なのでもちろんウェーダーなんて持ってません。でもまたあのルートを辿って帰るのはちょっと死ぬ。それにあの手摺りを伝って降りるのは危険すぎる。かと言って、別に渡河が安全なわけではない。
そしてこの北本内川、水質は最高で浅い場所はまるでビーチのようだが意外と深さがあって流れも強い。大人の膝上程度の水深なので注意して渡らねば。この後用事があるので靴と衣服を濡らすわけにはいかないからほぼ半裸状態で...感想ですが、11月の岩手の川を半裸で渡るのはお勧めできません...滑るし、林檎社製品は水没するし寒いし...後、この地域熊の出没件数が県ダントツで高い場所なんです。しかも水場。結構びびってました。単独と言う事も大きかったですね。
何はともあれ無事故で林道まで上がって来れました。濡れた服をハンガーフックにかけて、荷物を詰め込みエンジンをかける ー
p.s
ここは私が今まで探索してきた場所の中でもかなりアクセス難易度の高い場所です。昔は橋がもう一つありそこから楽にアクセスできたようですが、今では朽ちた木材と切れたワイヤーが残るのみです。因みにその橋は東北電気製鐡行...。崩壊の様子からして恐らく積雪や増水か何かで川中央付近の橋の部分が流されたのでしょう。現在は渡河か、踏板のない吊り橋を渡る→崩落箇所付近をトラバース→排水路に設けてある管理用の手摺り?を伝って行くしかない。こんなに進入難度の高い場所が他にあるでしょうか?(ある)訪問する際は最低2人以上で、熊除けスプレー、渡河の場合ウェーダー必須です。ワイシャツに作業着で挑んだ自分に説得力はありませんが....