廃墟、秋風、追憶

廃墟、風景

福島県双葉町 探訪記録1

2020年8月14日9:00...福島県双葉郡双葉町周辺...

車を止め、準備をして車を降りる。

まだ朝だけど暑い...いや、立ってる分にはいいのだけれど機材と一緒に歩くと汗が滲んでくる。取り敢えず水分と現地の情報が必要なので駅横の案内所?に入りました。お兄さんが笑顔で出迎えてくれ、町の現状について色々教えてくれました。どうやらこの町には住めるには住めるがライフラインが電気しかなく、水道、ガス(プロパンも?)未復旧。もちろん病院、薬局、学校、コンビニ、図書館...その他色々な施設や設備が不足している。スーパーやコンビニ、ガソリンスタンドは車でちょっと走った所にありました。双葉駅周辺の住宅街からは結構離れていますが。

 

双葉町の復興計画では、2022年の春頃までに復興再生拠点の全域避難指示解除による移住開始。2027年、つまり全域避難指示解除から5年後までに述べ2000人の人口を目標としているらしいです。そして双葉駅前にも商業施設の建設が進んでいるとの情報も。復興なのかはさておき、これで少しでも移住者が増え、復興に繋がる事を祈っています。

彼らから一通り状況について説明を受けた後、「隣の建物で積算線量計の貸し出しを行っているから好ければ借りてみては?」と言われたので借りる事に。書類に必要事項を記入し免許証のコピーを渡した後、線量計を貸してもらった。ここには結構私みたいなのや鉄オタや外国人が来るらしい。少年単独で来た事もあったと言う。そんなこんなで施設を後にし自動販売機でポカリを買いカメラを首に掛ける。 

 

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範囲がとても広いので取り敢えず目に入った場所から行く。駅前からすぐの路地。
一見普通の田舎の住宅街といった感じだが、写真に写っている家屋は全て廃墟。私の地元とたいして景色が変わらないせいか変な親近感というか、身近な事に感じます。

避難した当時から変わらない、何も。完全に時間が止まっている。

 

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家には何か急いでいたような雰囲気を感じた。身支度する暇もなかったのだろう。屋内の残留物を見た瞬間当時の回想シーンが(もちろん想像に過ぎないのだが)流れる。どういう気持ちでシャッターを切るべきなのか分からない。ただ、ブログに載せるから出来るだけ分かりやすいように考えながら撮ろうと思う。

上の写真の柵の破損の仕方が気になった。無理やりこじ開けられたような。動物?

(聞いた話だが、地震の後、突然警察官がやって来て「避難してください」と言われたらしい。)

 

 

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先ほどの路地を進む。おそらくここは...駐車場か路地か...少なくとも車が通れる場所だったのでしょう...草木に覆われた路面に苔むした車...写真奥には木まで生えています。しかも車の真横にです。元々あった木かは分かりませんが。それにしても9年でここまで...

 

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苔が凄くて車内を見ようとするも諦めました。

 

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路地を抜け、ちょっとした通りに出ました。青空と、蝉時雨と何かがカランカラン当たる音。

静かで閑散とした町。先ほど電気は通ってると聞いたのですが、電柱とか曲がってても問題ないのでしょうか。

 

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一見普通に稼働してそうな感じですが動いてません。去年浪江を探索した際に普通にお金入れて買おうとしたら買えなくて駅まで戻って水分補給したのは良い思い出()見た目は動いてそうなんですけどね、外観や見本の品を見ると当時のまま動いていないのが分かります。

当時はよく火事場泥棒的な犯罪が多発したと聞いてましたがこの周辺はあまりなかったのかな?

 

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ガソリンスタンドの奥にある事務室兼待合室的な部屋。中は酷い状態です。地震、盗難、獣害...恐らくどれも当てはまるでしょう。ただ、割れている箇所は一つでさらに結構小さいので動物説が有力な感じ。

 

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ガソリンスタンドの向かいにある消防団詰所。ここは荒らされた感じがあまりしません。四角く並べられたベンチ椅子の中央にストーブ...空のカップ麺の容器に毛布、発電機、懐中電灯...

簡単に当時の状況を想像できてしまう風景をとても悲しく思います。言葉が出ない。あれから何年たった?一体今まで何してたの?

f:id:akikazesya:20200911153719j:plain並ぶ防火服。大量の空の段ボール。

 

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路地を抜け川の土手に出た。この周辺は駅前より荒廃しているというか緑が多い気がする。元々はこの草地にも家が建っていたのだろう。残った基礎やブロック塀などから想像する。

 

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 ガソリンスタンド。奥の電柱が立っている場所は国道6号線。歩いて渡ることは出来ない。つい最近バイクの走行が可能になったばかり。スタンド内に入ると多くの運転手に白い目で見られているような気がして気まずいので移動します。

 

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先ほど「歩いて渡ることは出来ない」と言いましたがガソスタのすぐ隣に地下道がありました。すいません。ここを歩いて向こう側へ行きたいと思います。この地下道を左に進むと「厚生病院」があるそうです。行ってみましょう。案内所のお兄さんは「病院もない」と言っていたので稼働してるなんて期待はしていませんが...

 

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ちょっと埃っぽい。地上より少し涼しいです。

この階段を上がり病院を目指しましょう。

 

 

 

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道路から病院を見た時驚いた。普通に車が止まってて特に閉鎖されてる雰囲気もない。でも次の瞬間、駐車場の色んな場所から生えている草を見て目が覚めた。考えてみたら当たり前のことだが。よく見たら車は苔むしておりタイヤの空気は空っぽ。年式も10年以上前の車ばかり。

そういえば、昔は今ほど厳つい顔つきの車は珍しかったよなぁ...

 

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今でも鍵を開けてシートに座り、セルを回せば動いてくれそうだ。こうして見るとなんだかみんなオーナーの帰りを待っているんじゃないかって思ってしまう。このまま10年先もここにいるのだろうか...

 

 

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裏から見ていこうと思う。写真右側に正面玄関がある。

 

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裏手に回ってきたは良いが...草の勢いが凄くてほぼ藪漕ぎ状態..秋に来るべきだったかなぁ...それでもなんとか広場のような場所に出た。

真ん中に煙突。左下の平屋はボイラー室。周辺には洗濯室や掃除用具が置かれた倉庫などがあった。バックヤードですね。

 

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 この先は...検査科?なんの検査だろう。気になるが中には入れそうにもないので先へ進む。

このまま進めば正面玄関の方に回れるはず。

 

 

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 正面に出た...わけではなさそう。なんか別の施設名が書かれた看板が。でも道路には出れたので一応この病院を一周した。

 

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どうやらこの場所には病院・看護学院・老人ホームの3つの施設があるみたいですね。右側にある建物が恐らく老人ホームだと思うので後で見てみましょう。先ほど病院を一周したと言いましたがまだ奥に何かありそうですのでそっちを先に観に行きます。

 

 

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別病棟への連絡通路がありました。

それにしても、人がいなくなると本当にこんな景色になってしまうのですね..

 

上の写真ですがなんだか、ここだけ妙に落ち着いていて、綺麗に廃れているという印象。

少し立ち止まって、思った。私は今廃墟探索者としてここに居るのか?街が変わって行くのを記録すべきと言う使命感で撮影してるのか?

どちらにしてもエゴであって、批判的に思われるのは理解している。

美しさ(景観、哲学)を感じるから廃墟を撮る。この場所にいるのは何を感じたからなのか。

美しさとは違う何か感情的なもの。

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病院はこれで一周したようです。内覧はできない(多分)ので隣の建物を観に行きましょう。

何箇所か窓が割れていたり空いていたりするので入れないことはありませんが...

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施設名が見当たらないのですが...恐らく入居型の老人ホームでしょう。

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入居者を避難させることに尽力されていたのでしょう、散乱する車椅子に介護用ベッド、担架に介助用の道具...片付ける暇なんてなかったことは想像に難くない。

 

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停電が起こり発電機で対応...倒れた自転車は...。

写真には写っていないのですが下駄箱や受付も、今日、普通に職員が勤務しててもなんら不思議に思わない。日常と非常事態が混在したしたまま9年間。「まるで時間が止まっているようだ」ではく「時間が止まっている」。

 

 

 

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看護学院の方はまた次回観に行きたいと思います。

どうせ、消されてしまうでしょう。資料館では決して見ることの出来ない情景。これらの建物もいつか解体され、「昔こんなことがあったんだよ」って映像や写真、一部の遺構でしか伝えられなくなってしまう。もし、少しでも関心があるのなら自分の目で見るべきだ。それしか、